VecotrCraftの可能性
VecotrCraftとは?
ArtCraftがリリースしたアプリ群の中でベクターグラフィック編集を担当するアプリ、つまりAdobeでいうところのイラレです。
そもそもAdobe Illustratorとは出力機の解像度に依存しないベクターベースのグラフィック編集ソフトです。
画面、印刷機との解像度のギャップを埋めるためのソフトですが、昨今紙メディアの衰退でサイズが軽量なベクター画像を編集するソフトという側面もあります。
筆者は実質Illustrator ver2.0になる、Illustrator 88という時代からイラレを使い続けています。
そのイラレをオープンソースで再現しようというのがArtCraftのVectorCraftです。
VecotrCraftとイラレを比較していく
| 比較項目 | Adobe Illustrator | VectorCraft | 実務視点での評価・ポイント |
|---|---|---|---|
| 開発言語 / コア | C++(数十年蓄積されたレガシーベース) | Rust (ゼロベース設計) | メモリ安全性と並行処理能力の差が、極限状態での安定性に直結。 |
| 描画エンジン | CPU中心(一部GPUアクセラレーション) | 完全GPU駆動 (Metal / Vulkan) | パス数が数十万〜数百万に達した際の描画負荷、ズーム追従性に圧倒的な差が出る。 |
| 操作体系・ショートカット | 業界標準 (P:ペン、A:ダイレクト選択等) | 完全互換(マッスルメモリ踏襲) | 移行時の学習コストはほぼゼロ。指の動線はそのまま流用可能。 |
| パス演算(パスファインダー) | 高精度だが複雑なデータで処理待ち発生 | 超高速 (マルチスレッド並列処理) | 大規模な型抜きや分割でもフリーズしにくい。 |
| タイポグラフィ・字詰め | 極めて高度 (メトリクス/オプティカル/禁則) | 基本機能のみ(OpenType基本対応) | 日本語の緻密な組版や約物詰めはIllustratorが圧倒的。 |
| アピアランス / 効果 | 複雑な多重線・塗り・動的効果を完備 | 基礎的な線・塗りのみ(開発中) | 「アピアランスを駆使したグラフィック表現」は現時点ではイラレの独壇場。 |
| 画面表示の質感 | 美しさ優先 (Adobe独自アンチエイリアス) | 正確性優先(GPUテッセレーション) | イラレはふっくら柔らかく、VectorCraftは極めてシャープ(時にジャギー感あり)。 |
| ズーム・パン挙動 | 拡大時に再ラスタライズのワンテンポあり | 完全シームレス (60fps維持) | 巨大アートボードを俯瞰しながら作業する際のストレスはVectorCraftが極小。 |
| カラーマネジメント | 完全網羅 (ICC / Japan Color / Lab) | 基礎CMYK対応(プロファイル変換は発展途上) | 画面色と印刷実物のシビアな一致を求める現場ではIllustrator一択。 |
| 特色(PANTONE等) | ライブラリ標準対応 (分版プレビュー完備) | 非対応(手動スポット指定のみ) | 企業ロゴの特色指定や2色印刷の案件にはVectorCraft単体ではリスク大。 |
| 印刷入稿(プリプレス) | PDF/X-1a, X-4準拠、RIP親和性100% | PDF出力可能だがRIP検証不足 | 印刷所の自動チェックをパスし、事故を防ぐインフラとしてはまだ未成熟。 |
| Web / SVG出力 | 余分なメタデータや埋め込み画像が混ざりやすい | 極めてクリーン (直接コード利用可) | Webデザイナーやフロントエンドエンジニアへのデータ受け渡しはVectorCraftが有利。 |
| データ所有・動作環境 | Creative Cloud依存(サブスク・常時認証) | 完全ローカル完結 (無料 / OSS) | 機密保持が厳しいクライアントワークや完全オフライン環境で強い安心感。 |
Geminiの調査では以上のような対応表が作成されました。
青い背景の部分が有利とされています。
現状ではVectorCraftは緻密な印刷版下やカラーマネージメントは苦手科目になっていてますが、図柄を編集するだけならVectorCraftが良いかもという印象です。
またアピアランス関連はまだVectorCraftでは開発中ということでアピアランスを駆使した複雑な表現は厳しそうです。
VectorCraftの実際の操作感
ショートカットは完全互換ということでイラレ習得者であれば全く問題なく、再学習もなく快適に操作できます。
触ってすぐに気づくのが画像のレンダリングの違いです。
実寸にできなかった
さかのぼればWYSWYGというコンセプトが元になって生まれたソフトです。
画面で100mmなら、印刷しても100mm。
つまり画面でドキュメントを100%表示したときと印刷が等倍にならないといけません。
Vector Craft 0.12.0ではそれが実現できませんでした。
クローンではない
たとえばパスの単純化。
最新のイラレではコンテキストバーのスライダーでダイナミックに編集できますが、VectorCraftでは昔のイラレのようにダイアログが表示されてOKをクリックして実行スタイルになっています。
とは、いっても毎日のようにアップデートされるVectorCraft、いつ何時本家に追いつくかわかりません。
レンダリングの方式は違うし、ブラシの感じなども異なります。
VectorCraftのベースコンセプトはイラレのクローンかもしれませんが、どこかで追い抜いてしまうかもしれないという予感さえ感じます。
今後に期待
とにかく進化のスピードが尋常ではありません。
Githubでまるっと公開されているので、問題点などもGithubで指摘することも可能です。
筆者もテキスト入力中に色を変更しようとすると入力したテキストがサンプルテキストに戻ってしまうという問題を投稿してみたところ、数日で直してくれました。
Rustという言語でバイブコーディングで進化しているArtCraft、どこまで生き残っていけるのかがポイントになると思います。
VectorCraftの現在地では日本の印刷情報などは完全に欠落していますが、そんなものはAIを通して追加すれば、あっという間に実装されてしまうでしょうし、ターンテーブルもAdobeですらオープンソースで公開されている技術を利用していると聞いています。
今クリエイターがやるべきことはイラレとVectorCraft両方をインストールして、日々比較していくことだと思います。