イラレの新しい3D機能何が変わったのか?
クラシック3D
これが馴染み深いIllustratorの3D機能のパネル。
なんか1画面にすべてを詰め込んでいる感じですが、必要なものはすべて入っています。
つまり、Illustratorで必要な3D機能とは一体ナンであるのか?ということです。
それは立体的な描画をベクターデータで再現することです。
リアルなシェーディングではありません、でもリアルな影の表現はちょっと欲しい感じはしないでもないです。
それでもスーパーリアルな3D表現はBlenderで作成すれば良いんではないかというのが筆者の見解です。
新3D機能
オブジェクト、マテリアル、ライティング、さらにはレンダリングに分かれた新しいIllustratorの3Dの機能 はクラシックの機能に比べると、比較にならないほど高機能なものになっています。
それでは具体的に何が違うのか?
圧倒的に異なる機能レイトレーシング
グラフィックデザイナーには馴染みのない言葉だと思います。
デザイナー駆け出しのころから3Dに興味津々であった筆者にとっては、ああ時間がかかるやつという印象、現代のゲーマーたちにとっては、もうリアルタイム当たり前でしょ!とかいうやつです。
レイトレーシングの“レイ”は光を意味して、“トレーシング”はなぞるを意味します。光が入射してあらゆるものに反射して、反射した色成分を含んだ光の筋が別のものを照らしていきます。
反射する素材によって、反射される光は色や強さが変化しながら次のオブジェクト(対象)の印象を決定していきます。
そんな光学的な事象をコンピューターで数学的に再現していくのがレイトレーシングという計算方法です。
非常にリアリスティックな結果を得ることが可能ですが、膨大な処理が必要でGPUなどの機器がない環境では計算に時間が必要になる手法です。
昨今ではnVidiaの4000シリーズ など、リアルタイムでレイトレーシングを処理するグラフィックボードなどがあるので、あまり時間のかかる処理と認識されてはイませんが、裏側では途方もない処理が行われています。
最新のIllustratorの3D機能は、そのレイトレーシングに対応しているというということです。
3D(クラシック)はレイトレーシングには対応していません。
その点がクラシックと最新の3D機能との大きな違いと言えます。
この柔らかいけどよく見ると結構複雑な影の表現はクラシックの3D機能では到底再現できないレベルになっています。
よく見ると、立体化された3Dという文字の中で描画されている影や反射的な表現も然りです。
さらに3Dのパネルだけではアートボード上で直接オブジェクトを回転できるのも非常に便利です。
ひねりと膨張
押し出したあとに回転するひねり 、押出した一方を縮小するテーパー 、平面に空気を入れて膨らましたような膨張 はクラシクにはない機能です。
なぜ3Dクラシックが残っているのか?
3D(クラシック)と3Dとマテリアルは全く異なる機能なので、3D(クラシック)をIllustratorから排除してしまうと、 3D(クラシック)で 作成したアートワークを正しく表示できなくなってしまいます。
また3D(クラシック)はレイトレーシングなどの複雑な機能がないので非常に高速です。
リアルな表面の表現は必要ないけど、立体的な形を作りたいというようなときも3Dクラシックのほうがサクサクと作成することができます。
こういったところがクラシックの需要がある部分だと思います。
この立体物をベクターに展開する機能、新しい3Dには無い機能でしたが、Illustrator 27.3.1 のアップデートで追加されました。
3Dとマテリアルパネルの右上のボタンをクリックして表示されるセクションでベクターとしてレンダリングチェックボックスを有効にして、オブジェクトメニューからアピアランスを分割を選択すると、ベクターとビットマップ両方のオブジェクトに展開されます。
それでも、やっぱりクラシックに比べるとなんとなくモタモタしているイメージです。
まだ微妙なマッピング機能
高機能になった新しい3Dとマテリアル機能ですが、まだ微妙に3D(クラシック)のほうが優れていると感じるものがひとつだけあります。
それはシンボルをイメージマッピングとして利用する機能。
3D(クラシック)ではマッピングする方向や位置を展開した状態で確認することができるので思ったところへ正確に配置することができますが、3Dとマテリアルではマッピングの画面がないので、まだ少し操作しにくい部分もあります。
やっぱり両方あると安心
そんなIllustratorの3D事情、進化はしているものの微妙な部分もちらほら。
クラシックと新しい3D機能を賢く使い分ける必要がありそうです。