昔のグラフィックデザイン
かつてグラフィックデザインは紙媒体にしか存在しませんでした。
パーソナルコンピューターを使ってデザインが作れる時代になってもしばらくは写植もあったし紙焼きも日常的に行っていました。
そのころ自分はテレビ番組を制作しているいろいろな人たちに番組にデザインという概念を持ち込みましょうといろいろ働きかけていました。
1980年代の終わりから1990年代半ばくらいだったと思います。そのころはテレビ番組もデザインをするという考えはあまりなく、美術さんと呼ばれるひとたちが番組の意図に合うアートを提供するという考えが一般的だったと思います。
そういった頃のグラフィックデザインとは新聞、雑誌、ポスター、チラシ、パッケージなどに、版下を作るという技能をともに紙面の視覚的構成を提案する職業、またはブランディング構築という観点から俯瞰で商品や企業のイメージを視覚化、具現化する職業という感じでした。
まとめると情報発信者の意図を理解して視覚的にその意図を紙媒体上で再構築して効率よく見る相手にその意図を伝える職業であった という感じでしょうか。
今のグラフィックデザイン
過去の要素はキャリーオーバーしていると思いますが、印刷技術の向上で版下をノリとカッターで作ることはなくなりました。かわりに電子化が進んだ印刷技術に対するデータの作り方などの知識は新たに必要になったと思います。
大きく変化したのはデザインを提供する媒体の変化。
テレビのようなスクリーンメディアでのデザインの需要が高まったと思った瞬間、スマートホンが爆発的に普及してあっという間にデザインを提供する場の半数以上がスマートホンで使われるような時代になりました。
最近のシルエットが正方形に近いプロポーションのロゴデザインが増えたのはこのせいだと思います。なぜかというとスマートホンは縦で使うことが多いし、テレビは横長、コンピューターも横長で使うことがほとんどです。さらに紙媒体も死滅はしていません。
そうなると媒体が横長のこともあるし縦長のこともある、どちらにも違和感のないプロポーションが正方形に近いもののほうが良い、となるんだと思います。
まとめると情報発信者の意図を理解して視覚的にその意図を様々な媒体上で再構築して効率よく見る相手にその意図を伝える職業である という感じでしょうか。
crftの考えるグラフィックデザイン
crftとはこのサイトのことです、我々crftが考えるグラフィックデザインとは?
情報発信者の意図を理解してその意図を視覚的に 再構築するのはその通りだと思いますが、問題は具体的な作業になったときの範疇です。
たとえばデザインの中に使う写真。
こういう写真を使えば効果的に意思が伝わる!と思ったらカメラマンに発注するのが普通です。しかしその場合元々あるクライアントの意図をカメラマンと共有するという作業が発生します。
サイアクの場合伝言ゲームのように意図のピントがぼやけて100%欲しい写真が手に入らない可能性があります。
媒体はどうでしょうか?ウェブ媒体が増えてスクリーンに表示されるという事実は全くその通りです。
しかしそのスクリーンには紙媒体特有の視覚的情報は止まった状態でなければならないというルールがもうありません。デザインは動いていても良いのです。
この事実はかなり大ごとなことで、いままでグラフィックデザイナーは動きまで考える能力は求められていませんでしたが、もうそうはいきません。
動いたほうがクライアントの意図が伝わるなら動かした方が良いに決まっています。
まとめると情報発信者の意図を理解して視覚的にその意図を様々な媒体の性質をよく理解した上で手段を選ばず様々な形態で再構築し、見る相手にその意図を 効率よく 伝える職業である という感じでしょうか。
グラフィックデザインといっても昔からいまいち”こういう職業である! “ と、ピンとくる感じではなかったですが、現代では内容の多様化が進んでさらにナゾな職業になっていると思います。